マジョリティ特権


マジョリティ特権とは

定義
社会の中で人口的・文化的に多数派(マジョリティ)に属している人々が、無自覚のうちに享受している有利な立場や恩恵を指します。
特権といっても「お金や権力を持つ」という意味だけでなく、「自分が属していることを理由に障害を受けない」「当たり前に配慮されている」という形で現れるのが特徴です。
これはしばしば本人には「当たり前」「普通」に見えるため、気づきにくい点が問題となります

背景

社会は、ある属性(人種、性別、性的指向、国籍、年齢、障害の有無、宗教など)を「標準」や「普通」とみなす構造を持ちやすい。
その「標準」に当てはまる人々は、周囲から疑問を持たれずに存在できる一方で、そこから外れる人々は日常的に説明や正当化、適応を迫られます。

  1. 具体的事例
    (1)人種・民族
    白人特権(white privilege)と呼ばれる概念が典型。
    例:白人は化粧品や絆創膏が自分の肌色に自然に合うものを容易に見つけられる。
    例:店で万引きを疑われず、自由に買い物できる。

日本でも、日本人(大多数)はコンビニや役所で外国人と違い「在留カードを出してください」と言われない。

(2)性別
男性特権
夜道を歩いても痴漢や性暴力を恐れにくい。
職場で「家庭と両立できるの?」と聞かれにくい。
授業や会議で「女性なのに理系?」「男性なのに保育士?」と驚かれない。

(3)性的指向
異性愛者特権
自分の恋人や配偶者を職場や家族に紹介しても驚かれない。
保険制度や結婚制度が「異性愛」を前提に設計されているため、手続きがスムーズ。
映画やテレビで自分の恋愛の形が「普通」として描かれる。

(4)障害の有無
健常者特権
どの駅でもエスカレーターや階段を気にせず移動できる。
イベントで「点字プログラムありますか?」と尋ねる必要がない。
「障害はないんですか?」と聞かれることがほぼない。

(5)年齢
働き盛り世代の特権
就職活動で「年齢制限」に引っかからない。
店で「若すぎるから信用できない」や「年寄りだから理解できない」と言われにくい。

  1. 特徴と問題点
    「見えにくさ」
    → マジョリティ側は「自分はただ普通に生きているだけ」と思いがちで、特権に気づきにくい。
    「相対性」
    → 特権は絶対的なものではなく、社会や文化によって変わる。例えば日本で「日本人であること」は特権になりやすいが、海外ではそうではない。
    「不公平の再生産」
    → 特権の存在に無自覚な社会は、マイノリティへの構造的差別を温存してしまう。
  2. なぜ理解が大切か
    「マジョリティ特権」という言葉は、マジョリティ側を責めるためではなく、気づきを促すために使われます。

「自分は意識せずに有利な立場にいるかもしれない」と理解することで、

公平な制度設計

配慮ある言動

マイノリティの声を受け止める姿勢
につながります。

まとめ

マジョリティ特権とは、多数派に属することで無自覚に与えられる「生きやすさ」や「配慮」のことです。
それは悪意による差別ではなくても、マイノリティの人々が日常的に感じる「疎外感」や「不公平感」と直結します。
理解し共有することが、よりインクルーシブで公正な社会をつくる第一歩です。