心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、集団や職場において、自分の意見や感情を安心して表現できる状態を指します。
この概念はハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)が提唱しました。
具体的には次のような特徴があります。
・意見や質問をしても「無知だ」「否定的だ」と思われない。
・ミスをしても過度に責められない。
・異なる視点や批判を述べても排除されない。
・チームの中で自分らしく振る舞える。
この状態があると、メンバーは自由にアイデアを出し合え、学習や改善が進み、結果として組織のパフォーマンスが高まりやすいとされています。
心理的安全性の「デメリット」になり得る側面と事例
心理的安全性は基本的に望ましいものですが、運用の仕方やバランスを欠くと「逆効果」になる場合もあります。以下にいくつかの事例を挙げます。
- 「仲良しクラブ化」する
事例:会議で誰もが自由に発言できる雰囲気がありすぎて、批判や厳しい指摘が避けられるようになる。その結果、建設的な議論が深まらず、組織の成長が停滞する。
→ 「安心」だけが強調され、成果責任や緊張感が薄れるパターン。 - 過剰な発言や雑談の増加
事例:心理的安全性が高いために、必要のない細かい意見や雑談が増え、会議が長引く。効率が下がり、結論が出にくくなる。
→ 生産性とのバランスが崩れるリスク。 - 権威の形骸化
事例:上司やリーダーに対しても自由に物が言える環境があるがゆえに、組織としての方向性が定まらなくなる。指示が軽んじられたり、意思決定が遅れることがある。
→ リーダーシップの発揮が難しくなる可能性。 - 甘えや責任逃れにつながる
事例:「失敗しても責められない」という安心感が強すぎて、逆にリスク管理が甘くなる。ミスを繰り返しても改善が進まない。
→ accountability(説明責任)とのバランスが重要。
まとめ
心理的安全性は「自由に意見を言える」「失敗を共有できる」という点で、学習やイノベーションを促す。
しかし、行き過ぎると「仲良しクラブ化」「責任感の低下」「意思決定の遅れ」といった副作用が生じうる。
したがって、「心理的安全性 × 責任(accountability)」の両立がカギとなります。
ご希望なら、「心理的安全性を保ちながら成果責任も確保する方法(実践例)」もまとめましょうか?
心理的安全性を保ちながら成果責任も確保する方法
~心理的安全性と責任感を両立させる実践方法~
- 「心理的安全性」と「高い基準」をセットで伝える
やり方:「失敗しても責めない。でも高い目標は諦めない」と明言する。
例えばGoogleの研究では、成果を出しているチームは「心理的安全性」と「高いパフォーマンス基準」を同時に持っていました。
具体例:「自由に意見してほしい。その上で私たちの目標は〇〇なので、そこに向けて議論を集中させましょう。」 - 失敗を共有し、学びに変える仕組みをつくる
やり方:ミスを個人責任にせず、チーム全体の学びに変える文化を作る。
失敗を「叱責」ではなく「ナレッジ共有の機会」にする。
具体例:IT企業での「失敗共有ミーティング」や医療現場の「インシデント報告制度」。 - フィードバックは率直かつ尊重をもって行う
やり方:意見の自由は大事だが、相手を攻撃せず、改善につながる言い方を徹底する。
具体例:「これは間違ってる」ではなく → 「この部分を変えればもっと良くなると思う」と伝える。 - 役割と責任を明確にする
やり方:安心感があると「誰かがやってくれるだろう」と責任の曖昧さが出やすい。
そこで「誰が何をいつまでにやるか」を明確に決める。
具体例:プロジェクト進行表やRACIチャート(責任分担表)の活用。 - リーダーが「模範」を示す
やり方:リーダー自身が「失敗を認める姿勢」を見せる。これにより安心感が生まれる一方で、改善する姿勢も示せる。
具体例:「先日の判断は誤っていた。改善のために皆の意見を聞きたい」
→ 責任回避ではなく「責任を取った上で学ぶ姿勢」を見せる。 - 定期的にチームの“温度チェック”を行う
やり方:チームメンバーが「発言できているか」「責任感を持てているか」をアンケートや1on1で確認する。
具体例:「このチームでは率直に意見を言えていると思うか?」
「成果への責任は明確だと思うか?」といった質問をする。
まとめ
心理的安全性=「自由に発言できる安心感」
成果責任=「目標を達成する緊張感」
この2つを両輪として組み合わせることで、チームは「安心して挑戦しつつ成果を出す」状態に近づきます。